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2006年 02月 18日
YS-11という飛行機は、かつて飛行機マニアだった僕にとって、なじみ深い機種のひとつだ。
故郷の鹿児島では、鹿児島空港を主要な拠点のひとつとするYS-11が、割合低い空をゆっくりと飛んでいくのをよく目にした。 話は変わるが、かつて・・・第二次世界大戦以前の日本は、航空機大国だった。 ゼロ戦をはじめとする世界的な名機が生み出された。 しかし日本は戦に敗れ、戦後の一時期、連合国軍による占領政策によって航空機の研究や製造を禁じられてしまった。 YS-11は、そんな長い冬の時代を経て生み出された、戦後初めての国産旅客機であり、そして現在のところ、戦後唯一の国産旅客機だ。 この飛行機の誕生にまつわる、涙なしには語れない苦難のエピソードは、前間孝則著「YS-11 国産旅客機を創った男たち」に詳しい。 また、NHKの「プロジェクトX」でも、2週連続の特別版で取り上げられた。 そのYS-11が、日本の空から消える。 法改正により、衝突回避装置のないYS-11は、今年限りで日本の空を飛べなくなるというのだ。 そこで、まだ乗ったことのないYS-11に乗ろうと思った。 YS-11は、鹿児島を起点に種子島、屋久島、福岡へ、そして福岡を起点に徳島、高知へ飛んでいる。 鹿児島まで行くには時間もおカネもないので、福岡から徳島まで乗ることにした。 福岡までは、東京始発で大阪を午前1時過ぎに発車する夜行特急「はやぶさ」号を使い、徳島からは和歌山までのフェリーと南海電車を使って帰る事にした。 2月18日午前1時12分。 仕事場から駅に直行し、大阪環状線の終電で大阪駅に到着した僕は、4分遅れの「はやぶさ」号、A個室寝台「シングルデラックス」に落ち着いた。 本当はB個室寝台「ソロ」にしたかったのだが、あいにくと満席だった。 じゃあこの際だからと、「シングルデラックス」を奮発したのだ。 シャワーもオーディオもなく、ただベッドと洗面台があるだけの、時代遅れの個室だが、思っていたよりも窮屈でなく、そして落ち着けた。 照明を暗くして、深夜の街の光が窓の外を疎らに通り過ぎるのを眺めながら、ワインのミニボトルを開けた。 空高くには月が冴え冴えと浮かび、どこまでも列車を追いかけてくるようにも見えた。 列車の前の方からは、冷たい夜の空気を裂いて、汽笛の音が物悲しく響いてきた。 割合ぐっすりと眠れ、朝を迎えた。 カーテンを開けると、瀬戸内海沿いに走っているところだった。 風がないのか、海はべた凪ぎで、その向こうには島影が浮かび、朝焼けの空に日が昇ろうとしていた。 月はと言うと、太陽と反対側の空に、うすぼんやりと傾いていた。 博多には定刻10時10分着。 飛行機は13時50分発だから、かなり間がある。 そこで、昨年開業したばかりの、福岡市営地下鉄七隈線に乗って時間をつぶす事にした。 まずは博多から地下鉄空港線に乗って、天神まで。 天神から一旦改札を出て、七隈線の天神南まで、徒歩で地下街を通って乗り継ぎ。 改札は出るのだが、切符は1枚で行ける。 けれども、空港線と七隈線の距離は、僕の足でも8分かかるほど離れていた。 この両線の接続の悪さは、かなりマイナスになっているのではないかと思われる。 ![]() 起点の天神南。 福岡の地下鉄は、駅ごとに独特の、可愛らしいシンボルマークが付いている。 このマークは福岡在住のデザイナー、故 西島伊三雄(1923~2001)氏によるもの。 七隈線のマークは、亡くなる直前の病床で作られたという。 ![]() 七隈線の電車。 普通の地下鉄よりも、小ぶりな車両。 デザインは洗練されていて、近未来の電車が実現したかのようだ。 ちなみに大阪の鶴見緑地線、東京の大江戸線と同じく、リニアモーター駆動。 ![]() 車内も、インテリアや色使いが柔らかい感じで、いい。 車両のデザインは、世界的な工業デザイナー、アレクサンダー・ノイマイスター氏によるもの。 ![]() 歌にでもありそうな駅。 それにしても、乗客が少ない。 終点の橋本駅に着く頃には、全部でもバス1台で余裕で運べそうなくらいだった。 ![]() 橋本駅の地上部分。 ![]() バス停とは別に、こんな、マイカー送迎用のスペースまで作ってある。 こんなところも、未来を先取りしている。 ![]() しかし、駅は畑のど真ん中。 これから発展していくのだろうとは思うけど・・・。 ![]() トトロに出てきそうな、こんもりとした森が、駅から見えた。 行ってみると、本当にトトロがいそうな、鎮守の森だった。 ![]() うまそうな豚骨ラーメンの匂いに誘われて、駅近くのラーメン店へ。 「まるきん亭」 ![]() ワンタンメン750円。それと、替え玉ひとつ100円。 僕のごく個人的なイメージでは、博多ラーメンは、情熱的な熊本ラーメンや鹿児島ラーメンよりも、大人しくて個性が弱いようでもあるのだけど、それでもやっぱり美味しいものは美味しい。 ところで帰ってから知ったのだけど、この「まるきん亭」は、結構有名な店のようだ。 七隈線の駅で気付いたもの。 ![]() 間違って買った切符も、自販機に入れると買い直せる。 これは七隈線に限らず、福岡市営地下鉄ならば他の路線でもやっているサービスだが、関西では見かけないような気がする。 ![]() 「この器具には処理水を使っているので飲めません」 ・・・いや、飲める、飲めないの問題以前に、「飲まない」と思う。 だって・・・公衆トイレの便器の水だよ・・・。 さあ、関係のない話が続いていたけど、いよいよ地下鉄を乗り継いで福岡空港へ。 ![]() 駐機場に並んだ手前の2機がYS-11。 その向こうの小さいのは、YS-11の後継機のひとつ、SAAB-340B。 スウェーデンの、自動車も作っているあの会社の飛行機。 ![]() いよいよ、搭乗。 ボーディングブリッジではなく、タラップを使って乗る。 ちなみに今回乗った機体は、登録番号 JA8766。 1970年(昭和45年)7月23日に製造され、かつては「とくのしま」という愛称が付けられていた。 (むかしは、飛行機に一機一機、愛称が付けられていたのだ。「よど」号とか) エンジンが動き出すと、ジェット機では感じられない大きな音と振動が、びんびん伝わってきた。 人によってはただの騒音かもしれないが、いかにも飛行機が動き出す力強さ、ダイナミックさを直に感じ取れるような気がして、僕はしびれてしまった。 離陸するときは、ジェット機のような、身体が座席に押し付けられるような加速度は感じられず、「こんな低速で飛べるのだろうか?」と思うくらいの速度で、ふわりと頼りなげに飛び上がった。 空中でも、気流の小さな乱れを受けて、ふわりふわりと揺れた。 エンジンを全開にして空を目指すが、峠越えの蒸気機関車のように、なかなか上に上がらない、しかしそれでも力の限り上を目指しているかのような感じがした。 水平飛行に入っても、それほど高度がなく、速度も遅く、地上の風景が近くに見えた。 ローカル鉄道の旅に通じるような、のんびりさがあって、なかなかいい。 ![]() 丸い照明や、バスみたいな荷棚など、昔の空旅を感じさせる機内。 どことなく懐かしい雰囲気。 ![]() 瀬戸内海の島々。 ![]() しまなみ街道。 ![]() 瀬戸大橋。 ![]() 1時間余の空中散歩の後、徳島空港に到着。 おつかれさまでした~。 ![]() 空港ビル前には、阿波踊りの銅像がお出迎え・・・。 ひとまず空港バスで徳島駅に行ってから、徳島港行きのバスに乗り換え。 ![]() 和歌山行き南海フェリーの、フェリーかつらぎ(2,571トン)。 乗ってみたら、椅子席は1等室のみで、2等はカーペット敷きの桟敷席。 僕は甲板のあたりをあちこち見物しているうちに、いい場所を取り損ねてしまった。 和歌山までの途中、かつらぎ号の僚船とすれ違った。 ![]() まずは、フェリーつるぎ(2,604トン)。 ![]() だいぶ暗くなってから、フェリーくまの(2,137トン)。 潮の香と重油の匂いが混じった船の匂い、エンジンの音、船が波を蹴立てる音、白波、航跡、潮風、水平線、陸影、暗くなってからは街の明かり、灯台の灯・・・ 船旅もまた、いい。 和歌山港からは、南海電車の特急「サザン」号で大阪に帰った。 さて、日本では全機退役するYS-11だが、短い滑走路で離着陸できる性能や、燃費の良さ、そして、古くてもまだまだ丈夫である事から、海外で第2の人生を送る機体も多い。 YS-11の、海外での末永い活躍を祈らずにはいられない。 by skuroki | 2006-02-18 23:59 | 乗り物
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